住まいのコラム

HEAT20が注目される理由とは?省エネ住宅の基準について従来の指標も含めて解説

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住宅を新築しようと計画する際、重要視される性能のひとつが「省エネ」です。省エネ住宅は、CO2排出量削減の対策のひとつとしても挙げられ、関心が高まっています。省エネ住宅が、具体的にどのような基準をもとに省エネを実現しているのか、よくわからない人も多いでしょう。この記事では、省エネ住宅の断熱基準「HEAT20」の解説を通して説明します。

HEAT20とは

HEAT20とは

「HEAT(ヒート)20」とは、一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会の略称でもあります。メンバーは研究者、住宅・建材生産者団体の有志で、2009年に「20年先を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会」として発足。2020年7月22日に一般社団法人化しました。

HEAT20では、日本を8つの地域に区分し、それぞれの気候に適した断熱性能の基準値を定めて、グレードで評価しています。断熱性の高さを示す数値は、UA値を用いています。「H28省エネ基準」や「ZEH(ゼッチ)」など他の基準よりも、厳しい基準となっています。

HEAT20が掲げる目的

HEAT20が団体として掲げる目標は、「明日の日本の住まいの方向性を示し、技術を具現化し、それを促進するための提言をすること」です。長期的な視点に立ち、地球温暖化問題やエネルギー問題への対策として住宅のさらなる省エネルギー化を図るために、断熱性能に着目。そのための技術と評価方法を形にするとともに、健康で快適な住まいの普及を目指しています。

HEAT20の3つのポイント

HEAT20が目指す健康で快適な住まいを実現するには、「建築」「設備」「創エネ」の3つの要素をバランスよく調和させることが重要です。建築的要素とは、断熱、遮熱、通風、日光活用など建物自体の機能。設備的要素とは、空調機などの設備による低燃費性能など。創エネ的要素とは、太陽光発電などによるエネルギーをつくる機能です。

HEAT20が注目されている理由

HEAT20が注目されている理由

なぜ今、断熱基準のHEAT20が注目されているのか、その理由を解説します。

脱炭素化と住宅

2020年10月に日本政府が発表した「2050年カーボンニュートラル宣言」により、社会は脱炭素に向けて動いています。社会全体が出すCO2排出量のうち、住宅が占める割合も大きいことから、住宅の省エネ化が急務となりました。住宅の省エネ化には、断熱性能の強化が必要だといわれており、日本のみならず、世界の主要各国が脱炭素化に向けてさまざまな目標を掲げ、実現へ向けて取り組んでいます。

諸外国の水準との比較

日本の基準(H28省エネ基準)では、地域5〜8(主に関東に近い東北の沿岸部~西の地域と沖縄)のUA値は0.87と定められています。対して、アメリカ0.43、フランス0.36、イギリス0.42、ドイツ0.40。UA値が低いほど、建物内の熱が外に逃げにくく省エネ性能が高くなります。単純比較ですが、日本の住宅は国際的に非常に低レベルの水準にとどまっており、脱炭素化を進める中で住宅の省エネ化(断熱性能の向上)は必須といえるでしょう。

住宅の断熱性能とは

住宅の断熱性能とは

住宅において断熱とは、屋根(天井)、壁、床、窓、ドアなどを通して熱が建物外から建物内へ、また建物内から建物外へと移動するのを減らすことです。断熱は、住宅における省エネルギー化に欠かせない性能で、地球温暖化対策や健康で快適な住まいづくりのために重要です。そこで、省エネルギー住宅(省エネ住宅)の水準の一つになっています。

断熱性能の要素:外皮性能

断熱性能は「外皮性能」によって大きく変わります。外皮とは、屋根(天井)、壁、床、窓やドアなどの住宅の内部と外部の境界部分を示す建築用語です。外皮は、暑さや寒さ、雨や風などを防ぐ役割を大きく果たします。防ぐ性能が高い「住宅の外皮性能が高い」ということは、断熱性能が高いともいえます。

断熱性能の要素:UA値(単位:W/㎡・K)

UA値(外皮平均熱貫流率)とは、住宅全体の断熱性能を表す指標です。外皮をつたわって住宅内部から外へと逃げ出す熱量の平均値を表しています。UA値が低いほど、内部から外へと熱が逃げにくく、断熱性能が高いことになります。

断熱性能の評価基準は複数ある

断熱性能をはかる評価基準は複数あります。HEAT20以外では主に「H28省エネ基準」「ZEH」が挙げられます。H28省エネ基準は、地域ごとに建築物・住宅に必要な省エネ性能を定めた基準。ZEHは、外皮性能をH28省エネ基準より高く設定していることに加え、住宅の消費エネルギーを太陽光発電などでまかなおうとする基準です。詳しくは後述します。

HEAT20の推奨水準とは

HEAT20の推奨水準とは

HEAT20の推奨水準について、「地域区分」と「グレード」を解説します。

地域区分

日本は北海道から沖縄まで、地域によって気温や気候が大きく異なります。そこでHEAT20では、外気条件(外気温度および外気湿度)をもとに日本を8つの地域に区分し、各地域に合わせてUA値やグレードの基準値を設定しています。

8つの地域区分
1地域 2地域 3地域 4地域 5地域 6地域 7地域 8地域
佐呂間町等 札幌市・旭川市等 盛岡市・青森市等 秋田市・山形市等 つくば市・仙台市等 大阪、東京等 鹿児島市・高知市等 沖縄

グレード

HEAT20においては、室内の温度環境を重視しています。具体的には、冬期間に室内での体感温度を10℃〜15℃以上保つために必要な断熱性能を基準としています。G1、G2、G3の3つのグレードがあり、数字が大きいほど高水準です。それぞれのグレードについて、室内温度環境の基準のうち体感温度の基準を説明します。

G1

冬期間の最低体感温度が、「1地域と2地域で、概ね13℃を下回らない性能」「3地域〜7地域で概ね10℃を下回らない性能」。

G2

冬期間の最低体感温度が、「1地域と2地域で概ね15℃を下回らない性能」「3地域〜7地域で概ね13℃を下回らない性能」。

G3

2019年に追加された新しい基準です。冬期間の最低体感温度が「すべての地域で15℃を下回らない性能」

HEAT20住宅の利点

HEAT20住宅の利点

HEAT20基準の住宅は何がよいのでしょうか。その利点を解説します。

暖かく快適に暮らせる

HEAT20基準の住宅は、高い断熱性能によって、家全体(建物内)をほぼ同じ温度に保ちます。暖房機器のない部屋や廊下、トイレ、脱衣所などの暖房をつけていない場所も冷え込むことがなく、快適に暮らすことができます。また、断熱性能が高いため、一度暖めた室内温度が下がりにくく、暖房を止めた後も暖かさが長く続きます。

健康改善・維持効果がある

結露やカビは、住宅の表面温度の低下と水蒸気が原因で発生します。断熱性能の高いHEAT20基準の住宅は、表面温度を高く保ち、結露やカビの発生を抑制できるため、ぜんそくやアトピー性皮膚炎の改善、防止などにつながることも期待できます。さらに住宅内の健康問題として取り上げられることも多く、気温の大きな変化が引き起こすヒートショックのリスクを軽減することもできます。

省エネによる節約効果がある

断熱性能が高いHEAT20基準の住宅は、外気温の影響を受けることが少なく、また室内の保温・保冷効果も高いことから、冷暖房機器の使用頻度が減ります。特に夏冬における光熱費を大きく抑えることもでき、断熱性能の低い住宅と比較して、年間で数万円の節約につながることもあります。

HEAT20以外の断熱性能基準について

HEAT20以外の断熱性能基準について

HEAT20以外の断熱性能基準について、「ZEH」と「H28省エネ基準」を解説します。

ZEH(ゼッチ)

ZEH(ゼッチ)とは、Net Zero Energy Houseの略称で、経済産業省が管轄しています。断熱性能の高い外皮と高効率な設備によって、室内環境を良い状態に保ちつつ省エネを実現します。さらに再生可能エネルギーで電力を生産することで、住宅において消費量≦生産量を目指した住宅です。一次エネルギー消費量に関する評価基準であり、CO2排出量削減の対策のひとつとして国が推進しています。

ZEHの断熱基準の内容

ZEHは、「断熱性能」「省エネ性能」「創エネ」の3つの基準で評価しています。
1.断熱性能:UA値=0.4〜0.6(W/㎡K)以下
2.省エネ性能:一次エネルギー消費量を20%以上削減
3.創エネ:再生可能エネルギーの導入
1〜3の全ての基準をクリアし、一次エネルギー消費量を100%削減(消費量≦生産量)が達成できている住宅は、ZEHとして評価されます。

H28省エネ基準

H28省エネ基準とは、「建築物省エネ法に基づく平成28年省エネルギー基準」の略称で、国土交通省が管轄しています。省エネ基準は1980年(昭和55年)に制定、その後、1992年(平成4年)、1999年(平成11年)に改正。さらに2013年(平成25年)に一次エネルギー消費量の基準が新設されました。現行は、2016年(平成28年)改正の基準が用いられています。

H28省エネ基準の内容

「外皮性能の基準」と「一次エネルギー消費量の基準」の2つの基準で評価しています。外皮性能の基準とは、住宅の外壁や窓など建築の手法についての基準。一次エネルギー消費量の基準は、再生可能エネルギーや冷暖房設備、換気、給湯など設備の手法についての基準です。

HEAT20・ZEH・H28省エネ基準の比較

HEAT20、ZEH、H28省エネ基準の3つの基準を、断熱性能の主要な要素であるUA値で比較すると、総合的に最も基準が厳しいのがHEAT20。ZEHが続き、H28省エネ基準が最も優しいといえます。

UA値(W/㎡・K)
1地域 2地域 3地域 4地域 5地域 6地域 7地域 8地域
佐呂間町等 札幌市・
旭川市等
盛岡市・
青森市等
秋田市・
山形市等
つくば市・
仙台市等
大阪、東京等 鹿児島市・
高知市等
沖縄
H28省エネ基準 0.46 0.46 0.56 0.75 0.87 0.87 0.87
ZEH 0.4 0.4 0.5 0.6 0.6 0.6 0.6
HEAT20 G1 0.34 0.34 0.38 0.46 0.48 0.56 0.56
HEAT20 G2 0.28 0.28 0.28 0.34 0.34 0.46 0.46
HEAT20 G3 0.2 0.2 0.2 0.23 0.23 0.26 0.26

まとめ

まとめ

住宅を新築しようと検討し、省エネ住宅について調べてみると、さまざまな基準が出てきます。本記事では、HEAT20に興味を持った方に向けて、各基準の違いについても解説してきました。HEAT20は特に断熱性能に対する基準が厳しく、HEAT20の住宅は家族が快適で健康的に暮らせる家づくり、光熱費を抑えられる家づくりを目指す方におすすめです。

日本ハウスHDでは、耐久力の高い桧を使った在来工法にHEAT20 G2を超える断熱性能を組み合わせた、体感温度の暖かさと質感の温かみを兼ね備えた家づくりを行っています。断熱性能の高い、省エネ住宅に興味がある方は、カタログや展示場をぜひご利用ください。