住まいのコラム

木造住宅のシロアリ対策|新築時が特に重要な理由や建築前後の効果的な対処法を紹介

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この記事では、木造の家を建てたいと検討している人に向けて、新築時に特に重要となる対策を解説します。それはシロアリ対策です。なぜ新築時に特に重要なのかというと、建築基準法で定められていることも理由の1つですが、それ以外に新築時にしかできない対策があるからです。具体的な対策方法を紹介します。参考にしてください。

木造住宅のシロアリ被害とは

木造住宅のシロアリ被害とは

シロアリ被害とは、シロアリが木造の家の建材である木材を食べることで、家の耐久性が低下する被害です。シロアリは木材を中から食べ始めます。そのため表面的には被害が見えにくく、発見が遅れやすいという特徴があります。被害が多い場所は、土台や床束(床を支える柱)・柱などの木材です。これらは木造住宅を支える重要な箇所であり、そのままにしておくと深刻な劣化の原因となり、耐震性能の低下や資産価値の低下を招きます。大規模な修復が必要になってしまうこともあります。

シロアリとは?

シロアリとは?

シロアリの生態について、詳しく解説します。

シロアリの特徴

シロアリは、木材を主食とする昆虫で、主に土壌や地下、住宅内の木材や湿った場所に生息しています。屋外などで見る黒アリと姿は似ていますが、全くの別物で、黒アリはハチの仲間であるのに対して、シロアリはゴキブリの仲間です。暗くて湿気があり、暖かい場所を好むことから、特にこれらの条件がそろっている床下などに住みつき、被害を及ぼします。繁殖力も強く、初めは数頭でも1年後にはかなりの数に膨れ上がります。

日本に生息し家に被害を与えるシロアリは4種類

最も多くのシロアリ被害を引き起こしているのは、北海道の北部を除く日本全域に生息している「ヤマトシロアリ」です。他に、関東以西以南に生息する「イエシロアリ」、全国に点在して生息する「アメリカカンザイシロアリ」、奄美大島以南に生息する「ダイコクシロアリ」がいます。ヤマトシロアリとイエシロアリは特に湿った木材を好み、被害を与えます。一方、アメリカカンザイシロアリとダイコクシロアリは、木材に含まれるわずかな水分で生きられるため、乾燥した木材や木製家具などに被害を与えます。

ヤマトシロアリとイエシロアリの羽アリを見かけたら注意が必要

シロアリは、新しい巣をつくるために飛び立つ習性があります。そのため、家の周囲で羽がはえたシロアリ(羽アリ)を見かけたら、巣をつくられる危険が迫っているかもしれません。先述した日本に生息するシロアリの中で特に日本の家に被害を与えているのが、ヤマトシロアリとイエシロアリです。見かけたのが、ヤマトシロアリとイエシロアリの羽アリならば、特に注意が必要です。また、イエシロアリは、自分で水を運ぶことができ、2階以上や屋根裏にも巣をつくります。そのため被害が拡大しやすいという特徴があります。

木材以外も被害に遭うことがあるので注意が必要

シロアリが木材を好むのは、木の食物繊維の主成分であるセルロースが栄養源のためです。そのため、家具や畳、段ボール、新聞紙、衣類なども食べます。さらに、食べはしませんが、蟻道(進入口、通り道)をつくるために断熱材や金属ケーブル、コンクリートの基礎などに穴を開けることもあります。そのため被害を抑えるには、さまざまな場所への対策が必要になります。

新築時のシロアリ対策が重要な理由

新築時のシロアリ対策が重要な理由

シロアリは、新築時の対策が特に重要です。その理由を解説します。

建築基準法で対策が必要なことが定められている

建築基準法で、シロアリの被害を防ぐ防蟻と防腐への対応が定められています。防蟻への対応は、具体的に「木造建築の地面から1メートル以内の部分(柱、筋交い・土台など)には必要に応じて防蟻処理を行うこと」が明記されており、新築を建てる際にはこの基準を満たす必要があります。

新築時にしかできない対処法がある

シロアリ対策にはさまざまな方法がありますが、シロアリ対策しやすいつくりにするなど新築時にしかできない対処法が複数あります。具体的には「点検しやすいつくりにする」「侵入経路に対策を施す」「バリア工法を施す」「構造木材や断熱材などに防蟻処理を施す」「シロアリ対策になる木材を使用する」「防蟻シートを床パネル下面に張る」です。それぞれについて、解説します。

【新築時のシロアリ対策例】

【新築時のシロアリ対策例】

新築時に施すべきシロアリ対策例について、解説します。

点検しやすいつくりにする

先述した通り、シロアリの被害は木材の中など見えにくい部分から始まります。そのため、あらかじめ点検しやすい家のつくりにすることは、対策として重要です。具体策としては、床下に潜って点検できるように点検口を設置すること、家の周囲からも蟻道がないか点検できるように基礎の立ち上がり部分がデッキや物置などで隠れないようにするなどが挙げられます。

侵入経路に対策を施す

シロアリの主な侵入経路は「基礎の立ち上がり」「配管貫通部」「基礎の打ち継ぎ部」「玄関ポーチ」の4か所です。基礎の立ち上がりは先述の通り、蟻道を発見しやすいつくりにする。配管貫通部は、防蟻剤入りのウレタンやシーリングで隙間をふさぐ。基礎の打ち継ぎ部は基礎止水プレートなどで継ぎ目をふさぐ。玄関ポーチは、土台や玄関ドアを支える柱の下にもコンクリートを入れ、さらに防蟻剤入りのウレタンやシーリングで隙間をふさぐ。これら、重点的に対策を施すことで高い効果が期待できます。

バリア工法を施す

さらに、新築時に床下などにパイプを設置し薬剤を注入することでシロアリの侵入を防ぐ「バリア工法」を施すのも効果があります。バリア工法については、次項で詳しく解説します。

柱や土台にネオニコチノイド系の薬剤を散布する

バリア工法で一般的なのは、柱や土台にネオニコチノイド系の薬剤を散布する方法です。リフォーム時などでも散布できますが、柱や土台の奥などの隅まで散布できるのは建てる時だけです。ただし効果が続くのは5年程度と言われており、5年ごとに再散布が必要になります。再散布は、リフォーム同様に柱や土台の奥などの隅への施工は困難です。

上記同様に、ホウ酸系の薬剤を散布する

ネオニコチノイド系の他に、ホウ酸系の薬剤を散布する方法もあります。ホウ酸系の薬剤の方がネオニコチノイド系より効果が長く続き、人間やペットにとっても安全だと言われています。

構造木材や、断熱材などに防蟻処理を施す

骨組みとなる木材のことを「構造木材」と呼びます。この構造木材に防蟻薬剤を注入することでシロアリ被害を防ぐことができます。この方法は新築時のみ施工可能な方法です。構造木材には「加圧注入」という方法で防蟻処理を施しますが、この効果は半永久的とも言われています。ただし、防蟻薬剤を注入した木材以外には効果を発揮しないため、家全体を守るためには、その他のシロアリ対策を組み合わせる必要があります。例えば、断熱材に防蟻処理を施すのも効果があります。

シロアリ対策になる木材を使用する

木材には、シロアリが嫌がる天然成分が含まれているため、食べられにくい種類があります。具体的には、檜、杉、ケヤキ、チーク、ヒバ、ローズウッドなどです。ただし“食べられにくい”というだけで、“食べられない”わけではありません。別途、対策は行った方がよいでしょう。

防蟻シートを床パネル下面に張る

安全性の確認された薬剤や天然成分を注入した「防蟻シート」を床パネル下面に張り、シロアリが寄ってくるのを防ぎます。建築現場で薬剤を散布するのではなく、工場で安全管理のもとで加工された「防蟻シート」を使用するため、人体にとって安全で、土壌汚染もないと言われています。

【入居後もできるシロアリ対策例】

【入居後もできるシロアリ対策例】

入居後も施せるシロアリ対策例について、解説します。

バリア工法を追加する

すでにシロアリの被害が発生している場合の対策として、一般的な工法です。新築時に施すバリア工法は、薬剤をまんべんなく注入、散布することでシロアリの「侵入」を防ぐものですが、入居後(建築後)のバリア工法は、柱に穴を開けて薬剤を注入したり散布することで木材や壁内にいるシロアリを退治するものです。すでに侵入しているシロアリに有効な手段です。

ベイト工法を施す

駆除剤を混ぜたエサを蟻道などにまき、シロアリを退治する方法です。シロアリはエサを発見すると、仲間を呼び、エサを巣へ持ち帰る習性があります。その習性を生かし、巣ごと退治することができます。住居への薬剤散布の安全性が気になる人に、おすすめの対策です。

(新築時同様に)薬剤の散布

前述した通り、バリア工法の効果期間は約5年と言われています。そのような効果期間がある工法を行った場合、再処理が必要になります。ただし再処理時では、床下や基礎の部分から目視できる木材や壁のみにしか施工できないなど、再処理できる範囲は限られます。また、散布する薬剤には人体に害があるものもあるため、注意が必要です。

シロアリ対策の注意点

シロアリ対策の注意点

実施にシロアリの対策をする際に、気を付けるべき点を解説します。

羽アリ・シロアリを見かけた場合、駆除業者を手配

前述した通り、シロアリは、新しい巣をつくるために飛び立つ習性があります。羽アリを見かけたら、これから巣をつくろうとしている可能性とすでに被害に合っている可能性の両方があります。シロアリ、特に羽アリを見かけたら、被害が拡大しないようにすぐに業者を呼びましょう。

対策工法や薬剤はいくつもある、どれを選択するかが重要

木造住宅にとってシロアリの被害は大きな問題であるため、さまざまな対策方法が生み出され、多くの種類の薬剤が使用されています。そのため非常に多くの選択肢から、適切なものを選ぶ必要があります。なお新築時にしか施せない方法もあるため、事前にしっかりとした対策の知識を持っておくことも必要です。

建築後の対策を踏まえ相談しながら建てることがおすすめ

前項で「新築時にしか施せない方法もある」と触れましたが、「シロアリ被害を受けにくい家」ということだけを意識していては、本当に望む家が建てられなくなる可能性があります。例えば、シロアリ駆除業者が避けるべきとしている「基礎断熱工法(基礎の立ち上がりに断熱材を貼り付け住居の断熱性を高める工法)」は、住みやすさを向上させるという点において大きな効果があります。そのため、シロアリ対策のノウハウを持った技術のある住宅メーカー・工務店などに相談するのがおすすめです。

まとめ

まとめ

木造住宅で快適に長く暮らすためには、シロアリ対策は欠かせません。この記事では具体的な対策を詳しく解説してきましたが、新築時に「シロアリ対策がされた、住みやすい家」を設計し、施工することが、非常に重要であることが分かっていただけたかと思います。

日本ハウスHDでは、シロアリ対策をしっかりと考慮し、長く快適に暮らせる家づくりを行っています。新築・リフォームともに、お客様との綿密なコミュニケーションを大切にし、専属の棟梁・職人が責任を持って、「理想の家」の実現をお手伝いします。ぜひご相談ください。