住まいのコラム

断熱性能のグレードG2とは?HEAT20が提唱する3つのグレードの違いを解説

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住宅における断熱性能の基準の一つに「HEAT20」があります。HEAT20では、断熱性能をG1、G2、G3の3つのグレードで評価しています。この記事では、住宅の購入を検討している人に向けて、グレードによる断熱性能の違いなどについて、解説します。そもそもHEAT20とは何かについても、紹介するのでぜひ参考にしてください。

住宅における断熱性能とは

住宅における断熱性能とは

住宅など建物の断熱性能は、「素材」「部位」「建物自体(全体)」の3つの視点から、それぞれ分けて考えることが大切です。素材の断熱性能は、素材の熱の伝わりやすさ(熱伝導率)。部位の断熱性能は、屋根や天井、床、壁、窓、ドアなど建物の部位ごとの熱の伝わりやすさ(熱貫流率)。建物自体の断熱性能は、建物の外皮(外壁、屋根、床、開口部などの外周部)からの熱の逃げやすさ(外皮平均熱貫流率)です。それぞれ「λ(ラムダ)値」、「U(ユー)値」、「UA(ユーエー)値」で表します。

U値|熱貫流率

U値で表す熱貫流率は、部位が熱量をどれだけ通すか(逃げやすさ)を表します。使われている素材の熱伝導率と厚さなどを元に算出します。U値が小さいほど、部位から熱が逃げにくいことになり、断熱性能が高いと言えます。なお、部位は一つの素材ではなく、複数の素材を重ね合わせてつくられていたり、同じ部位でも場所によって構造が異なったりします。実際に活用する場合には、その点も考慮して計算されます。

UA値|外皮平均熱貫流率

UA値で表す外皮平均熱貫流率は、建物全体が熱量をどれだけ通すか(逃げやすさ)を表します。住宅の内側から外壁、屋根、床、開口部などの部位を通過して外側へと逃げる熱量を、外皮全体で平均して算出します。具体的な計算式は、単位温度差当たりの総熱損失量(内外の温度差1℃の場合の部位の熱損失量の合計)÷外皮表面積です。UA値が小さいほど、住宅の内側から外側へと熱が逃げにくいことになり、断熱性能が高いと言えます。断熱性能の基準のHEAT20では、断熱性の高さを示す数値として、UA値を用いています。

断熱性能の3つのグレード、G1・G2・G3の違い

断熱性能の3つのグレード、G1・G2・G3の違い

断熱性能を示すG1、G2、G3の3つのグレードは、国の基準とは別に「HEAT20」という団体が提唱しています(団体のHEAT20については次項以降で解説します)。断熱性能にかかわる基準には「ZEH」や「H28省エネ基準」などもありますが、HEAT20は「体感温度」に重きを置いているのが特徴です。具体的には、暖房の省エネ性能と、冬期間の室内体感温度を10℃~15℃以上に保つことを基準とし、下記の地域区分ごとに基準を満たす程度によってグレードを設定しています。G1、G2、G3それぞれの特徴やメリットについて、解説します。

○地域区分(一例)

8つの地域区分
1地域 2地域 3地域 4地域 5地域 6地域 7地域 8地域
佐呂間町等 札幌市・旭川市等 盛岡市・青森市等 秋田市・山形市等 つくば市・仙台市等 大阪、東京等 鹿児島市・高知市等 沖縄

G1とは

G1は、冬期間の最低体感温度が「1地域と2地域で、概ね13℃を下回らない性能」「3地域〜7地域で概ね10℃を下回らない性能」を持っています。つまり、大まかに言うと、北海道の家であれば、省エネを考慮しながら冬場の室内体感温度13℃以上を保てる性能ということです。同様に、東北地方から沖縄の家であれば、省エネを考慮しながら冬場の室内体感温度10℃以上を保てる性能ということです。

G1の住居にするメリットは、省エネ性能と居住環境としての質、それら性能と質を得るために必要な費用のバランスがとれており、コストパフォーマンスがよいことです。G1に準拠することで、暖房が入っていない部屋も結露が少ない、断熱性能を備えた住居を手に入れられます。

G2とは

G2は、冬期間の最低体感温度が「1地域と2地域で、概ね15℃を下回らない性能」「3地域〜7地域で概ね13℃を下回らない性能」を持っています。つまり、大まかに言うと、北海道の家であれば、省エネを考慮しながら冬場の室内体感温度15℃以上を保てる性能ということです。同様に、東北地方から沖縄の家であれば、省エネを考慮しながら冬場の室内体感温度13℃以上を保てる性能ということです。

G2の住居は、省エネ性能と居住環境としての質の両方を最適なバランスで兼ね備えており、日本の住居の最高等級とも言えます。暖房設備のない廊下や脱衣所も13℃以上に保つことができるなど住居内の温度差が少なく、健康面や快適性に対する大きなメリットを得られます。

G3とは

G3は、2020年に最終公開された新しい基準です。冬期間の最低体感温度が「1地域と2地域、7地域で、概ね16℃を下回らない性能」「3地域〜6地域で概ね15℃を下回らない性能」を持っています。つまり、大まかに言うと、北海道や沖縄の家であれば、省エネを考慮しながら冬場の室内体感温度16℃以上を保てる性能ということです。同様に、東北地方から九州地方の家であれば、省エネを考慮しながら冬場の室内体感温度15℃以上を保てる性能ということです。
G3の住居は、省エネ性能と居住環境としての質の両方を追及した最高性能の家と言えます。

HEAT20とは

HEAT20とは

HEAT20とは、一般社団法人20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会の略です。大学教授や研究者、住宅・建材生産者団体などの専門家で構成されています。HEAT20では、日本を8つの地域に区分し(前述した地域区分)、それぞれの気候に適した住まいの断熱性能の推奨基準を定めました。その一つが、前項までに紹介してきた「冬場の室内体感温度」です。

HEAT20の基準は、国が定める「平成28年省エネ基準」の住宅より30%暖房負荷削減、「ZEH(ゼッチ)」以上の断熱性能を目指すなど、他の基準よりも、厳しい基準となっています。

HEAT20発足の背景

諸外国においては、地球温暖化とエネルギー問題の解決に向けて、年を追うごとに住宅性能の基準が厳しくなっています。一方、日本の住宅性能の基準は、1999年からほとんど変わらないレベルにとどまっており、省エネ性や快適性において大きな遅れを取っています。

これらの背景から、長期的な視点に立ち、地球温暖化問題やエネルギー問題への対策として住宅のさらなる省エネ化を図ることを目的に、HEAT20は2009年に発足されました。住宅における省エネ化と断熱化された住宅の普及を目指し活動しています。

HEAT20による住宅シナリオ

HEAT20による住宅シナリオ

HEAT20では、「住宅外皮の性能を示すグレード(G1、G2、G3)は、住宅省エネ基準のような外皮平均熱貫流率UA値を満たすことを目指すのではなく、地域区分ごとに規定した住宅シナリオに示す室温(NEB)と省エネルギー(EB)の両立を実現させることにある」と、明確にしています。

NEB|室温とG1・G2・G3

住宅シナリオにおける室温(NEB)は、下表の通りです。「暖房期最低室温」は、冬場など暖房を入れる時期の最低室温を示しています。G1では10℃以上、G2は13℃以上、G3は15℃以上を保つことが定められています。
また「15℃未満の割合」の項目は、住宅内部で15℃未満となる時間・面積が全体のどれくらいあるのかを、グレードごとに定めています。

※参考:HEAT20 外皮性能グレード/一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会公式サイト
http://www.heat20.jp/grade/

戸建住宅G1〜G3の住宅シナリオ・NEB

1.2地域 3地域 4地域 5地域 6地域 7地域
居室連続暖房 LDK平日連続暖房、他は部分間欠 部分間欠暖房
暖房期最低室温(OT)(3%タイル値) 平成28年 概ね10℃を下回らない 概ね8℃を下回らない
G1 概ね13℃を下回らない 概ね10℃を下回らない
G2 概ね15℃を下回らない 概ね13℃を下回らない
G3 概ね16℃を下回らない 概ね15℃を下回らない 概ね16℃を下回らない
15℃未満の割合(面積比による按分) 平成28年 4%程度 25%程度 30%程度
G1 3%程度 15%程度 20%程度 15%程度
G2 2%程度 8%程度 15%程度 10%程度
G3 2%程度 5%程度 2%程度

※部分間欠:一定の時間をおいてつけたり、消したりすること

EB|省エネルギーとG1・G2・G3

住宅シナリオにおける省エネルギー(EB)は、下表の通りです。省エネルギー基準の住宅に対してどの程度の削減効果が見込めるか、その目安を「平成28年基準からの暖房負荷削減率」として示しています。

全館連続暖房は、室温を確実に維持できる一方で、初期費用と運用コストが高価なため、計画性が必要です。そこで、導入の判断を検討するための指標として、「全館連続暖房時の暖房負荷増減率」を定めています。例えば、3地域でG2の住居を建てる場合は、平成28年基準からの削減率が40%削減以上であれば、初期費用に納得できれば積極的に進めていくべきということを示しています。

※参考:HEAT20 外皮性能グレード/一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会公式サイト
http://www.heat20.jp/grade/

戸建住宅G1~G3の住宅シナリオ・EB

1.2地域 3地域 4地域 5地域 6地域 7地域
居室連続暖房 LDK平日連続暖房、他は部分間欠 部分間欠暖房
平成28年基準からの削減率 G1 約20%削減 約30%削減 約35%削減 約45%削減 約40%削減
G2 約35%削減 約40%削減 約50%削減 約60%削減 約55%削減
G3 約55%削減 約60%削減 約70%削減 約80%削減 約75%削減
全館連続暖房時の暖房負荷増減率
(対平成28年基準居室のみ暖房)
G1 約10%削減 約5%増加 約35%増加 約15%増加 約50%増加
G2 約25%削減 約20%削減 平成28年レベルと概ね同等のエネルギーで全館連続暖房が可能
G3 約50%削減 約45%削減 約40%削減 約55%削減 約40%削減

※部分間欠:一定の時間をおいてつけたり、消したりすること

住宅水準|G1・G2・G3

日本は外気温の地域差が大きいため、全国を8つの地域に分けて各地域の代表都市ごとに、住宅シナリオを実現するために必要なUA値を設定しています。それが下表です。

※参考:HEAT20 外皮性能グレード/一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会公式サイト
http://www.heat20.jp/grade/

地域別の代表都市と外皮平均熱貫流率

地域の区分 1地域 2地域 3地域 4地域 5地域 6地域 7地域
代表都市 札幌 盛岡 松本 宇都宮 東京 鹿児島
外皮性能水準別
外皮平均熱貫流率(UA値)
W/(m2・K)
平成28年基準 0.46 0.56 0.75 0.87 0.87 0.87
G1水準 0.34 0.38 0.46 0.48 0.56 0.56
G2水準 0.28 0.28 0.34 0.34 0.46 0.46
G3水準 0.2 0.2 0.23 0.23 0.26 0.26

まとめ

まとめ

断熱性能を示すG1、G2、G3の3つのグレードについて、解説してきました。前述してきた通り、日本の国が定めている住宅の断熱性能の基準は、省エネ性、快適性(健康への影響を含む)ともに、十分なものではありません。また、断熱性能の低い家は、住居の劣化の原因となる結露などが発生しやすいというデメリットもあります。これから住居を考える際には、HEAT20が示すグレードを基準にすることをおすすめします。

日本ハウスHDでは、耐久性の高い檜を使った在来工法に、日本国内の最高水準とも言える「HEAT20 G2」の断熱性能を組み合わせた、体感温度の暖かさと質感の温かみを兼ね備えた家づくりを行っています。断熱性能の高い、省エネ住宅に興味がある方は、カタログや展示場をぜひご利用ください。